もしかしてBeatles

僕が書いてゴトー&カメレオンズやソロでやっているナンバーで「部分的にBeatles」というのがある。

これは友人宅でBeatlesフォロワー、俗に言う「ビートルズの遺伝子」を持ったバンドやアーティストをこれでもか、と聴かせてもらった時(その友人の膨大なコレクションと知識、理解と解釈の深さには脱帽だ!)、「こういうバンドはそれぞれBeatlesに似てるけど、Beatlesではないよな・・・。それぞれが思うBeatlesなんだな・・・あっ、もしかしてこれは世界中のBeatlesファンの数だけBeatlesがいるのかも!」とひらめいたわけ。

 

逆にBeatlesナンバーで、「あれ?もしかしてこれってあの曲から持ってきたのかも!」とひらめくものも多い。しかし、そう言った関連曲がなんであるかなんて僕がここでわざわざやらなくても世の中にいくらでも指摘されている。実際、ジョンは「バレないかいつもヒヤヒヤしてたものさ!」なんて言う発言があるくらいだから「持ってきちゃった」例はかなりありそうだ。このコーナーではそういう彼らのインスピレーションになったと思われるけど世の中で指摘されてないものを挙げていきたい。もちろん、僕が気づくくらいだから世界中のどこかでは指摘されていると思うけどね。


Nowhere Man sounds like a "Dylan"?


ネタ切れになったかと思いきや、先日、友人宅で「ひとりぼっちのあいつ」を弾いてる時に閃いた。この曲のサビ、♪Nowhere man, please listen, you don't know what you're missing, nowhere man, the world is at your command...のとこのコード展開、これってDylanじゃない?って思ったのはいいけど、Dylanのなんだっけ?と思ってああ、やっぱりLike a Rolling Stoneじゃないかって思った次第。Dylanのその曲は65年6月のヒットだからその年の暮れに出たRubber Soulに収録のこの曲の曲想が浮かんだ頃と符合するんじゃないか?!なんて妄想もした。

Nowhere manはJohnが色恋でない内容の歌を書いた最初のものと言われてるみたいだけど、DylanのMr. Tambourine ManとMan繋がりってこともあるんじゃなかろうか??言いっ放しは無責任なのでちょっと調査します。


Hi Hi Hi from Sweet Little Sixteen


もう持ち駒が尽きてしまったこのシリーズ、早くも番外編です(笑)。

 

これのどこが似てるっちゅうねん!と思わず言ってしまう御仁もいらっしゃることかと思いますが、ギターで弾いてみるとわかりますよ。そう、コード進行が同じなんです。Sweet Little Sixteenの「ファンキー・モンキー・ベイビー」みたいなブレイクはありませんが、歌い出しから展開へと同じコード展開していきます。

 

僕については、このHi Hi Hiを弾き語ってみようかと思ってギターで弾き始めたら「あああ!これは!」と遅まきながらに発見したってワケです。流石、ポール、普通に聴いていたのではわかりません。まぁ、この進行はブルース展開の応用なので同じ展開の曲はほかにもあると思います。

 

ところで、Beatles解散後のポール、「俺と言う時代#7」にも書きましたが、Another Dayはヒットしたものの、続くGive Ireland Back To The Irishは放送禁止、次のMary Had a Little Lambは童謡過ぎてイマイチ、やっとヒット曲と思ったHi Hi Hiも放送禁止、となかなかきびしいスタートでしたね。このあとMy Loveが出て調子を出してくると言うか、今も活躍するSir Paulというわけですね!

 

一方のチャック・ベリーのこの曲、Sweet Little Sixteen、映画「真夏の世のジャズ」でジャズメンをバックに演奏しています。僕は、たったその1曲を見たいために映画館に行きました。ジャズメンからみたらロックンロールなんてガキンチョがやるもんだ・・・的な軽蔑の視線と苦笑いをチャックに投げているのがなんともはや、ですが、そんな状況で照明の具合で骸骨みたいなチャックは孤軍奮闘、ダックウォークも派手にかましてエンターテインメント全開です。そんなパフォーマンスを前にして踊る観客や少しだけ捉えられた彼らの歓声は実はチャックを孤軍奮闘にはさせていなかったのかもしれませんね。


From Me To You from I Want You, I Need You, I Love You


From Me To You - 言わずと知れたビートルズの英国における3枚目のシングルである。この曲、キーはCで始まるが、ミドル8に入ると、Cのキーでは普通出てこないGmに飛んで、そのあとC7そしてF・・・というFのキーに転調するのである。3枚目にしてこの離れ業。

この曲はヘレン・シャピロと英国巡業中のバスの中で書いたと言われ、ポール自身、この転調に関しては自身満々で次のように述べている(https://www.beatlesbible.com/songs/from-me-to-you/)。

 

That middle eight was a very big departure for us. Say you're in C then go to A minor, fairly ordinary, C, change it to G. And then F, pretty ordinary. But then it goes, 'I got arms...' and that's a G minor. Going to G minor and a C takes you to a whole new world. It was exciting. (The Complete Beatles Recording Sessions, Mark Lewisohn)

このミドル8は僕らにとって大きな進歩だった。キーがCでAmにいくと、それってまぁ、普通だよ。で、C、Gと来てF。これも自然だ。だけど、"I got arms~"に来た途端Gmだよ。キーがCなのにGmにいくってのはまったく別世界に行くようなものだからね。興奮したよ。

 

まるで世紀の大発見をしたかのような語り口だが、ちょっとこのELVISの"I Want You, I Need You, I Love You"を聴いてみて欲しい。まさにこの同じ転調をしているのだ。ポールがELVISのこの曲を知らないはずはないし、ギターで弾いてみなかったとは絶対思えない。ほかのインタビューでも「あのブリッヂ(=ミドル8)は完璧だ。転調するんだ」みたいなことを言っているが、ELVISのこの曲については一切言及がない。皆さんご存知のとおり、"I Saw Her Standing There"のベースがチャック・ベリーの"Talking About You"まんまであることについてはポールは堂々と白状しているんだが・・・。

 

このドミナント・マイナー(キーがCならGマイナー)への展開は気持ちいいので、この曲だけでは飽き足らず必殺の5枚目"I Want To Hold Your Hand"でも使っている。

 

※ちなみに僕は"From Me To You"の♪ダラリーダラズンズンダーを「サラリーマンは散々だ~」と日本語化して自分のバンドで歌っている。


Piggies from Waltzing Matilda


長男が小さい時、よく家で掛けていたアルバムの中にこのDisney's Children's Favoritesシリーズがあり、当時たぶん渋谷区宇田川町にあったタワーレコードで買ったんだと思う。全部で3枚あった。そもそもこのシリーズを買おうと思ったきっかけは長男に聞かせるというより、Vol.3にビートルズがGet Back Sessionsでやっていた"Baa Baa Black Sheep"が収録されているのに気づいたからだった。

 

さて、そのVol.3をかけっ放しにしていた時、突如として"Piggies"が聞こえてきたではないか!これには驚いた。

 

しばらくしてこのLPもあまり聞かなくなり売ってしまったのだが、SNS時代となりビートルズマニアの方々と接するようになるとどうしてもその曲が何だったのか突き止めたいと言う思いに駆られ、YouTubeなどで片っ端から曲をチェックしてみた。そうやって再発見したのがこの "Waltzing Matilda"である。並べて聞くと、どう?似てないか?

 

調べるとオーストラリアが発祥の地で、国民的な歌であると記述されている。ジョージが本当にこの曲をヒントにPiggiesを書いたかどうか、両者を関連付ける情報は皆無と言っていい。昨年リリースされたWhite Album50周年騒ぎでもこの曲を引き合いに出しているのはこれまた皆無であった。とりあえず「似ている」ことを提示したので深い調査はこれからである。


"I Call Your Name" from "Speak Low"


まだSmokey Robinson &と付く前のミラクルズの録音曲。3枚目のアルバム"I'll Try Something New"に入っている。いきなり、ラテン、である。このラテンがミドルでテンポ・チェンジする。あっ、これってI Call Your NameのミドルがSKAになるあの感じに似てないか?

 

Speak Lowはシングルカットされていないので、アルバムで聴くしかない。ではBeatlesはこのアルバムI'll Try Something Newを持っていたのだろうか?BeatlesがミラクルズのYou've Really Got A Hold On Meをカバーしているのは知られるところだが、その曲が入っているアルバムがI'll Try~なら「ビンゴ!」なのだが、そうではなかった(You've Really~は4枚目のThe Fabulous Miraclesに収録)。

 

しかし、I'll Try~にはI've Been Good To YouというBeatlesがカバーしていたとされるナンバーが入っており、その意味ではこのアルバムを聴いていた可能性は高い。どうだ!(しかし、このI've Been Good To YouはThe Fabulous Miraclesにも入っているからなぁ!笑)。

 

しかし、しかし、である。I'll Try~にはIf Your Mother Only Knewというのも入っており、え?それってYour Mother Should Knowのヒントになったんじゃない?これで、どうだ!?笑 


"There's A Place" from "I Want A Guy"

先日、Beatlesの連中も聴きまくったに違いないタムラ/モータウンのガール・グループThe Marvelettesを聴いていたらこのナンバーに「あれ?」となった。この歌いだし、似てないだろうか?

"There's A Place"と言えば、Beatlesのファーストアルバムに収録されたレノン=マッカートニーのオリジナルで、実はファースト・シングルの候補にもなったという話をどこかで読んだことがある。

この夕陽が差しているような曲は初期のナンバーにしてはストレートなLove songではなく、ある意味で老成した雰囲気さえ抱かせる。シングル・カットされてこそいないが、今では彼らの代表曲として語られる"In My Life"に先駆けた「場所」を歌った渋いナンバー。この曲と"Misery"の2曲は米国キャピトル・オリジナル・シリーズからはずされているのはそんな理由もあるのだろうか?